2025/05/13 14:58


――金もない、余裕もない、でも速いクルマだけは諦めなかった。
ヤフオクで見つけたインプレッサが、人生のスピードを少しだけ変えた。
あの音、あのダクト、あの頃のまま、心に残っている。――


Subaru IMPREZA WRX

Style:Déformer



出会いは、ヤフオクだった

20歳のとき。
まだスマホも今ほど普及してなかった時代に、ヤフオクで一台のインプレッサに出会った。

きっかけは単純だった。
速い車、ラリー車に憧れていた。
ランエボかインプレッサ――だけど、決め手は「安さ」だった。

グレードも色も走行距離も、選べる余裕なんてなかった。
でも、それでもいいと思えたのは、「乗れる」ことが何より大事だったから。

納車は横浜。出品者のもとへ向かい、湾岸を自走で帰ってきた。
アクセルを踏むたび、笑いがこみ上げてきた。



――エンジンが回るたびに、心も回った。
ただ乗れることが、最高の贅沢だった。――


あの頃、みんな一人一台だった

誰かの車に乗るんじゃない。
みんながそれぞれ、自分の車を持っていた。
友人と、そして一人で。どこへ行くにも、インプレッサだった。

でも、なかなか手のかかる子でもあった。
ちょこちょこ壊れるし、今の車と比べれば不便も多かった。

それでも、
スバルサウンドのドロドロしたあの音、
ボンネットのエアダクト、
あの頃の速さを感じられた瞬間は、何よりも嬉しかった。



――完璧じゃなくてよかった。
ちょっと壊れて、ちょっと速くて、それがちょうどよかった。――


思い出は、少しあとからやってくる

手放したのは、25歳のとき。
次に乗る新しいインプレッサに夢中で、別れは意外とあっさりしていた。

でも、時間が経った今、思い出すたびにわかる。
ちゃんと、愛着があったんだなって。

また乗りたい気持ちもある。
ただ、もうあの頃みたいには走れないかもしれない。
峠を攻めたあの日が、若さの特権だったことも、今ならわかる。



――夢中だったから、気づけなかった。
でも今なら言える。「本当に、好きだった」って。――



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